アナタは生まれ変わりを信じるか?
入院して時間ができたので積読本を消化中
せっかくならアウトプットしようということで読んだ本の感想と私の戯れ言を
最近実写映画化し話題になった小説
月の満ち欠け / 佐藤正午
ちなみに実写映画見ていないです
<あらすじ>
あたしは、月のように死んで、生まれ変わる――
この七歳の娘が、いまは亡き我が子? いまは亡き妻? いまは亡き恋人?
そうでないなら、はたしてこの子は何者なのか?
三人の男と一人の女の、三十余年におよぶ人生
その過ぎし日々が交錯し、幾重にも織り込まれてゆく、この数奇なる愛の軌跡
<感想> 以下ネタバレを含みます
読書メーターで少し感想を載せましたが文字数制限によりかなり短めにまとめた感想になったので改めてブログで語る
まずは話の軸となる「正木瑠璃」と「三角哲彦」の出会い
この正木瑠璃が生まれ変わりの発端となるのだが・・・
「正木瑠璃」には夫がいて、三角との恋はいわゆる「許されざる恋」
夫である「正木竜之介」も不倫をしていたことが物語の構成で後に分かるのだが・・・
そもそもまずこの夫婦の結婚は「愛」では無いような印象
故にお互い不倫をしてたことにあまり疑問も違和感も持てなかった
「正木瑠璃」と「三角哲彦」の純愛を読者がすんなり受け入れるよう、意図的に正木夫婦へ感情移入をしないようにしているのか?
夫婦関係が崩壊しているような中、瑠璃は三角と出会う
そんな瑠璃は27歳で事故死をしてしまう
その後も三角に会うために生まれ変わりを繰り返し三角を追いかけ続けるのだが
正木瑠璃と三角哲彦のパートで、瑠璃が生まれ変わってまで三角に会いにいきたいと思えるほど愛情があったと感じられる描写が無い
読者に想像させるためわざとなのかとも考えたがそれにしてもまったく正木瑠璃に感情移入もできないし共感できる部分もない
三角の方は割と瑠璃のことを愛していると分かる描写があるのだが・・・・
瑠璃に関してはむしろ愛以外の理由で三角に執着しているのでは無いかと思えてしまう
それは瑠璃の発言から
ひとつは正木龍之介の先輩が自死した際に残した「ちょっと死んでみる」という遺書
瑠璃はそれを「試しに死んでみて別の人に生まれ変わる」と解釈したこと
瑠璃の夫は先輩の試し死にを許せないと憤怒したが、瑠璃は試し死にの気持ちが分からないことも無いと三角に打ち明け
そして三角に「私も月のように死んで生まれ変わる」「そして哲彦くんに会いに行く」と語る
その後しばらくして瑠璃は電車事故で亡くなるという流れ
他にも「私たちは生きているから、死後の世界は誰にも分からない」「死はふつうを超越している」などの発言も描かれている
瑠璃の発言や、描写から読み取れる性格を考えると
正木瑠璃という女性は三角を純粋に愛していたから何度も生まれ変わって会いに行ったと言われるとなんだか腑に落ちない
瑠璃は「試し死に」をし、生まれ変わって三角に会いにいくと言ったから
本当に生まれ変わって会いにきたんだよ、ほら言ったでしょ月のように死んでも何回も生まれ変わるってと言っているような、証明のためでは?そんな想像をしてしまう
でもそちらの方が「正木瑠璃」らしく、なんだか腑に落ちる
そして生まれ変わってまで会いたい相手だったのか疑問に思えるような描写だからこそ
生まれ変わりの瑠璃たちの人生は何だったのかと思えてしまう
本のあらすじに「愛の軌跡」とあるがとても愛とは思えない部分が多かったかなと
この「正木瑠璃」は生まれ変わりを繰り返し
小山内堅と小山内梢の娘である「小山内瑠璃」へ
そして後々、正木竜之介が働く小沼工務店3代目社長の娘「小沼希」へ
そして小山内瑠璃の親友である緑坂ゆいの娘「緑坂るり」へ
緑坂るりまで生まれ変わり、53歳になった三角とやっと再会を果たし物語は完結する
最後、緑坂るりは三角を前に何も言えなくなってしまうのだが
三角はそんなるりに対して「瑠璃さん、ずっと待っていたんだよ」と一言
三角が正木瑠璃を愛していたのはわかったからこのセリフはすっと心に入ってきた
人間や死後の世界は不透明な部分や不思議な部分が多いから
生まれ変わりや前世の記憶って私はあってもおかしくないとは思っている
そんな人は読んでみたら面白いかもしれない
ひとつひとつの言葉選びは全体的に丁寧で綺麗だったかなと思うし
妙に心に残る言葉も多々ある
瑠璃の生まれ変わりも、その周囲を取り巻く人物も最初の正木瑠璃に繋がっていたり、周辺人物たちが繋がっていたりする上に、2代目の生まれ変わりの瑠璃の父親である小山内堅から話しが始まり、話も過去と未来と行ったりきたりするから相関図としても物語としても混乱する部分が多いので時間をかけ考えながら読むのが良い
複雑に絡み合った関係性や「正木瑠璃」という不思議でどこか人を惹きつける力のある女性像、幼いながらに「大人の恋」という前世の記憶を持つ生まれ変わりの瑠璃たちを実写映画ではどんなふうに表現されているのかは気になるところ